ユーザーの声
ADOC-Sを利用している現場の声
作業療法士 仲間 知穂- 約5年間、保育園や小学校、特別支援学校を訪問し巡回相談を行っている。
子供たちに願う将来
先日、ある中学校で、ADOC-Sを囲み、保護者と担任、支援員、作業療法士、みんなで一緒に面談をした時のことです。
「国語や数学はもちろん、苦手な教科でも頑張って参加する気持ちを育てたい」担任の先生が『授業』のイラストを指さして言いました。その男の子は授業中に落ち着きがなく、勝手に教室から出て行ってしまう日々を過ごしていました。この状態はもう何年も続いていました。先生は「これから高校受験や就職が待っている。いつかは父親になるかもしれない。苦手なことも、自分のため人のために頑張れる人になってほしい」と、彼に願う”将来”についても語りました。
子供のためにできることを見つける
保護者はその面談の席で「今まで問題児としてしか扱われてこなかった。親としても苦しかった。先生の想いを知ることができて嬉しい。」と語り、『家族』のイラストを指さしました。そして、「学校で頑張れたことをゆっくり聞いてあげることは家庭でもできるかもしれない」そう話しました。
いつもその子のそばについている支援員の先生が『体育』のイラストを指さし言いました。「彼は身体を動かすことが得意。体育でみんなに認めてもらえる機会を作りながら、彼に自信を持ってもらってはどうだろうか。」
そして、巡回相談に来ている作業療法士は言いました。「体育が得意という自信が、苦手な授業への参加につながるかもしれない」
子供に届けたい教育を
その後、先生は男の子と相談をして、授業が始まってから決められた時間が経つまでは席につくことを約束しました。すると、男の子は先生と約束した時間、国語も数学も教室の中で過ごせるようになりました。1ヶ月後の面談には男の子本人も参加していました。先生と保護者はADOC-Sで作った支援計画書を男の子に見せながら、彼に期待する将来と、そのために今届けたい教育としての『授業』や『体育』について話しました。
男の子は「自分は昔から問題児と言われているとわかっていた。僕についての話を、先生やお母さんが僕がいないところで話していることも知っていた。でも、こんな風に僕のことを想ってくれていたなんて知らなかった」と話していました。
みんなでつくる教育支援
私は、作業療法士として約5年間、保育園や小学校、特別支援学校を訪問し巡回相談をしています。子供の支援の話し合いでは「気になる問題をどのように解決するか」が話題の中心になりやすく、解決方法について学校と家庭の意見が合わないこともありました。
ADOC-Sを使った面談を始めてからは、「気になる問題」があるけれど、この子に「届けたい教育」は何だろうということが話題の中心となりました。ADOC-Sのイラストは、保護者と先生をつなぐ共通言語です。「お家では買い物の練習しているんです!」「玉子焼きを作ることが上手なんです」こんなことを先生に言っていいのかわからなかったけど…と言いながら、イラストを指さしお家の様子を語ってくれるお母さんもいます。学校の想いも、家族の想いも、イラストという共通言語を通して伝える姿を目にするようになりました。
ADOC-Sを使うことで、先生と保護者が一緒につくる支援が実現できるんだと感じています。